変体仮名・上代特殊仮名遣甲乙表

Unicodeに収録されている変体仮名について、字源となった字の上代特殊仮名遣における甲乙をまとめる。

本文書ではさらに、変体仮名による上代特殊仮名遣の書き分け可能性について検討する。下表にはこの際の使用文字選定の参考情報として、学術情報交換用変体仮名 | 国立国語研究所にもとづき、精興社変体仮名、中西印刷変体仮名、明治27年築地活版五号明朝体活字変体仮名への収録状況を合わせて示す(リンク先に情報がないものは?とする)。

かな 字源 甲乙 音訓 備考 収録状況
精興社中西印刷築地活版1894
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𛀣--
𛀤---
𛀥
𛀦-
𛀧---
𛀨---
𛀩
𛀪-
𛀻-ゴ乙の万葉仮名---
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𛂩-
𛂪-
𛂫-
𛂬---
𛂭---
𛂮--
𛂯
---
𛃉
𛃊---
𛃋-
𛃌-
𛃍---
𛃎-
𛃏--
---
𛀲
𛀳-
𛀴
𛀵-
𛀶--
𛀷-
𛀢---
---
𛂳---
𛂴---
𛂵
𛂶
𛂷--
𛂸
𛂹--
---
𛃔-
𛃕---
𛃖---
---
𛀸
𛀹-
𛀺--
𛀻濁音仮名---
𛂘-
---
𛁗-
𛁘---
𛁙--
𛁚
𛁛-
𛁜---
𛁝----
---
𛁷---
𛁸濁音仮名---
𛁹---
𛁺--
𛁻
𛁼---
𛁽---
𛁭
---
𛂙
𛂚-ヌの万葉仮名--
𛂛-
𛂜
𛂝-ヌの万葉仮名-
---
𛃗---
𛃘--
𛃙
𛃚--
𛃛-
𛃜--
𛄝-ムの万葉仮名
𛄞-ムの万葉仮名--
---
𛃧
𛃨---
𛃩
𛃪-
𛃫
𛃬---
𛃢--
---
𛄂--
𛄃---
𛄄---
𛄅---
𛄆
𛄇---
---
𛀁
𛀏---
𛀐----
𛀑-
𛀒---
𛀓---

以上のことから、上代特殊仮名遣の甲乙を区別しない場合は通行のかな、区別する場合は字源の万葉仮名の甲乙に応じて変体仮名を選択し書き分けようとすると以下の通り(メ乙類は「晩」の声符ということで仮に𛃔を置く)。 複数の仮名候補のある音節は、精興社変体仮名、中西印刷変体仮名、明治27年築地活版五号明朝体活字変体仮名への収録数が最大の変体仮名を選択する(下表太字。同着の場合は文字コードの小さいものを選択する)。

イ甲イ乙エ甲エ乙オ甲オ乙
𛀑𛀒
𛀦き𛀤𛀥𛀧𛀩け𛀲𛀳𛀶𛀢𛀴𛀵𛀸𛀹𛂘𛀺𛀻
𛁜そ𛁗𛁘𛁙𛁚
𛁷𛁸𛁼𛁭と𛁺𛁻𛁽
𛂏𛂑𛂙𛂛𛂜
𛂪𛂫𛂬𛂩𛂭𛂮𛂯へ𛂴𛂵𛂶𛂷𛂸𛂹𛂳
𛃉𛃋𛃌𛃍𛃎𛃊𛃏𛃕𛃖𛃔も𛃘𛃙𛃚𛃗
𛀁𛀓 𛃢よ𛃧𛃨𛃩𛃪𛃫𛃬
𛄄𛄅𛄆𛄇𛄂𛄃

試みにこの方針で万葉集317をかな書きにすると下記の通り。

あ𛃔つち𛂙 わかれし𛁻𛀦ゆ かむさ𛂯゙て たかくたふ𛁭𛀦
するがなる ふじ𛂙たかねを あま𛂙はら ふりさ𛀴𛃉れば
わたる𛂪𛂙 か𛀴゙𛃗かくら𛂪 てるつ𛀥𛂙 𛂪かり𛃗𛃉𛀁ず
しらく𛃙𛃗 いゆ𛀦はばかり 𛁻𛀦じく𛁚 ゆ𛀦はふり𛀳る
かたりつ𛀦゙ い𛂪つ𛀦゙ゆかむ ふじ𛂙たかねは

以上